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施工管理の転職先を経審で調べる|退職金・技術者数の見方

公開日 2026-09-04調査番号 R-article-125

求人票に退職金制度のことが書かれていない。書いてあっても「退職金制度あり」の一行で終わっている。一級を持った技術者がその会社に何人いるのかも、当然どこにも出ていない。

面接で聞けなくはない。ただ、一次面接で退職金の話を切り出すのは気が重いし、技術者の人数を尋ねれば、なぜそれを知りたいのかと返される。

この記事で扱うのは、それらの情報が、応募する前から会社ごとに公開されているという話である。建設業にだけある仕組みで、公共工事の入札のために作られたものだ。ただし見える範囲には明確な限界があり、その限界のほうが実務では重要になる。

なお、この記事では特定の会社名や点数は扱わない。公表元が二次配布を制限しているためで、ここで書くのは調べ方と読み方だけである。

経営事項審査という仕組み

公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経営に関する審査を受けなければならない。建設業法27条の23である。

公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。 2 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。 一 経営状況 二 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項

通称は経審(けいしん)。ここで注意しておきたいのは、条文が対象を限定していることである。受審するのは「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする」建設業者であって、建設会社が一律に受けるものではない。

審査の結果は、経営規模等評価結果通知書と総合評定値通知書という書面で通知される。そこに何が書かれているかが、この記事の本題になる。

公表を命じている条文は無い

経審の条文をひととおり読むと、結果の通知先は建設業者本人(27条の25・27条の27・27条の29第1項)と、公共工事の発注者(27条の29第3項)に限られている。「公表」という語が出てこない。

建設業法には書類を公衆の閲覧に供する規定があるが、対象は経審の結果ではない。

国土交通大臣又は都道府県知事は、政令の定めるところにより、次に掲げる書類又はこれらの写しを公衆の閲覧に供する閲覧所を設けなければならない。 一 第五条の許可申請書 三 第十一条第一項の変更届出書

許可申請書と変更届出書などであって、経審の結果通知書は列挙されていない。施行規則12条が追加している書類にも含まれない。

それでも、誰でも検索して見ることができる。公表を実際に行っている一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)が、その根拠と趣旨を自ら書いている。

経営事項審査結果の公表は、国土交通省及び都道府県からの委託を受け行っています。 これは、競争参加者選定手続の透明性の一層の向上による公正さの確保、企業情報の開示や相互監視による虚偽申請の抑止力の活用といった趣旨に基づいて行っているものです。

法律が公表を命じているのではなく、委託を受けた公表事業として行われている。そして挙げられている趣旨は、入札参加者を選ぶ発注者側の透明性と、虚偽申請の抑止である。求職者はそこに入っていない。

だからといって見てはいけないわけではない。公共工事の企業評価のために作られた情報を、転職者も会社研究に使える——この記事の立ち位置はそこにある。

通知書のどこを見るか

通知書は1枚である。左半分に建設工事の種類ごとの数字が並び、右半分に「その他の審査項目(社会性等)」という欄がある。転職先を見るときに関係が深いのは右半分だ。

退職金については、建退共への加入と、退職一時金または企業年金制度の導入が、それぞれ「有」「無」で載る。法定外労災の加入も同じ形式である。

左半分には、建設工事の種類ごとに総合評定値(P)、完成工事高、元請完成工事高、そして技術職員数が並ぶ。技術職員数は一級・うち講習受講・監理技術者補佐・基幹・二級・その他に分かれている。

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2026年7月以降の申請分から、社会保険の欄が削除された

ここが、いま書かれている他の解説と食い違う部分である。

令和8年7月1日施行の改正で、社会保険に関する審査項目が削除された。国土交通省の改正資料にこうある。

令和2年10月に建設業許可・更新の要件に社会保険加入が追加され、令和7年10月以降に経営事項審査を受審する企業は社会保険加入に係る許可要件を当然満たすことに 社会保険加入に関する審査項目を削除(各項目-40点)(W1-1:雇用保険、W1-2:健康保険、W1-3:厚生年金保険の加入有無に関する減点項目を削除)

つまり、社会保険の加入は建設業許可の側で確認するようになったので、経審で重ねて評価する必要がなくなったということである。これは「加入しているかどうかを気にしなくてよくなった」という意味ではない。経審という一つの窓口から読めなくなった、というだけである。

そしてもう一点。いま検索して出てくるデータの多くは、まだ改正前の申請分にあたる。検索結果には新旧区分という列があり、CIICが定義を明記している。

令和8年7月1日以降の申請分は、「1」が表示されます。 令和5年1月1日~令和8年6月30日の申請分で審査基準日が令和5年8月14日以降の場合は、「2」が表示されます。 令和5年1月1日~令和8年6月30日の申請分で審査基準日が令和5年8月13日以前の場合は、「3」が表示されます。

改正から間もない時期に確認した限りでは、表示されるデータは「2」が大半で、「1」はまだ少なかった。開いた通知書に社会保険の欄があるかどうかは、その会社がいつ申請したかで変わる。だから新旧区分と審査基準日を先に見る。

点数の高さで会社を選ぶ話ではない

総合評定値(P)や、社会性等の評点(W)には、転職とほとんど関係のない要素が混ざっている。

W点の内訳には、防災協定の締結、監査の受審状況、公認会計士等の数、研究開発費、建設機械の所有台数、ISO9001・ISO14001の登録の有無などが含まれる。防災協定を結んでいる会社は点が高くなるが、それは働きやすさの指標ではない。

労働条件に関係する項目は、W1という区分にまとまっている。改正後のW1の名称は「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」で、建退共、退職一時金・企業年金、法定外労災、若年技術者の育成、技術・技能の向上への取組、ワーク・ライフ・バランスへの取組、就業履歴を蓄積する措置、そして自主宣言制度の宣言の有無が並ぶ。

点数を比べるのではなく、この区分の「有」「無」を、面接で確認する質問の入口として使う。それがこの通知書のいちばん現実的な使い方である。

分かること、分からないこと

ここがこの記事の核心になる。

通知書から読めるものと読めないもの

通知書に書いてある

  • 退職金退職一時金・企業年金制度の導入の有無
  • 建退共加入の有無
  • 技術者工種ごとの技術職員数/社会性等欄の技術者数
  • 財務審査基準日時点の自己資本額・利益額
  • 処分審査基準日時点の営業停止・指示処分の有無
  • 働き方該当する評価項目の有無

通知書では分からない

  • 退職金施工管理職が対象かどうか
  • 建退共本人の手帳・掛金が履行されているか
  • 技術者在籍する技術者の実人数
  • 財務現在の資金繰り
  • 処分その後の是正や経緯
  • 働き方残業時間・休日・配属先

技術者数については、もう少し説明が要る。通知書には工種ごとの「技術職員数」と、社会性等の「技術者数」が別の欄として載っている。そして工種ごとの数は、同じ人が複数の工種に計上されうる。縦に足しても、その会社に在籍する技術者の実人数にはならない。土木一式と建築一式の両方に名前が入っている人がいる、と考えれば分かりやすい。

完成工事高にも似た注意がある。平均をとる年数は選択制で、2年平均の通知書もあれば3年平均の通知書もある。どちらなのかは通知書の見出しに書いてある。

退職金制度の「有」も、それが施工管理職に適用されるかまでは示さない。ここは求人票と就業規則の話になる。建退共そのものの仕組みと、退職金として実際に受け取れる金額の考え方は建退共と退職金の記事で扱っている。

そもそも出てこない会社がある

会社名を入れても検索結果が0件になることがある。これは決定的な限界なので、先に知っておいたほうがよい。

実際に、施工管理の求人に出てくる会社を6分類15社ぶん確認してみると、ゼネコン・地場の建設会社・専門工事会社・住宅会社の12社はすべて検索できたが、施工管理の技術者を派遣・常駐させる形態の3社は、大臣許可でも知事許可でも検索結果が出なかった。

ただし、0件から理由までは分からない。経審を受ける対象ではないのか、結果の有効期間が切れているのか、審査中なのか、検索した名称が正式な商号と違っているのか——検索結果はそのどれなのかを教えてくれない。

つまり、経審で調べられるかどうかは会社の規模ではなく、その会社が経審を受けているか、結果が有効な期間内か、どの行政庁の許可かによって決まる。そして0件は「良くない会社」の証拠では、まったくない。派遣・常駐の形態で働く場合の実務経験の扱いは派遣の実務経験の記事で別に扱っている。

調べる手順

  1. 応募先の許可番号を確認する。求人票、会社サイトの会社概要、名刺のいずれかに「国土交通大臣許可(般-◯)第◯◯◯◯◯号」「◯◯県知事許可」の形で載っている

  2. CIICの経営事項審査結果の公表を開き、商号名称で検索する。このとき大臣か、どの都道府県知事かの区分を選ぶ必要がある。「すべて」の選択肢は無いので、1で確認した許可行政庁を選ぶ

  3. 検索結果の新旧区分と審査基準日を見る。社会保険の欄があるかどうかがここで決まる

  4. 詳細を開き、右側の社会性等を読む。退職金・法定外労災・認定の状況・処分の有無

  5. 左側で工種ごとの技術職員数を見る。縦に足さない

名称が正式な商号と違うと出ないことがある。「株式会社」を前株・後株のどちらで入れるかでも結果が変わりうるので、出なければ会社概要の表記どおりに入れ直す。

経審が入口になる質問

読み終えたあとに何が変わるかというと、面接で聞く内容が具体的になる。「福利厚生はどうなっていますか」ではなく、次のように聞ける。

  • 退職一時金または企業年金の制度があると公表されているが、施工管理職も対象か。勤続何年から支給対象になるか

  • 建退共に加入していると公表されているが、内勤の施工管理でも手帳の対象になるか

  • 若年技術者の育成に関する評価項目が「非該当」だが、中途で入った場合の教育はどうなっているか

公表されている事実を前提に置いた質問は、詮索に聞こえにくい。そして答え方そのものが、その会社を測る材料になる。監理技術者や主任技術者としてどう配置されるかという観点は管理監督者の記事、入社日を急がされる背景は入社日と専任義務の記事にある。

経審で出てこない会社や、残業時間・中途採用比率のように経審には載らない数字については、厚生労働省のしょくばらぼで調べる記事で扱っている。通知書の「営業停止処分の有無」は審査基準日時点の状態にすぎないので、過去5年分をさかのぼる方法は処分公表歴を調べる記事を参照してほしい。

何を見て応募先を決めていたか

自分の転職活動を振り返ると、求人票と面接以外では、会社のホームページを一通り見ていた。経営者が語っている内容、その会社が目指している方向、売上、従業員数。そのあたりはすべて確認した。

会社の規模と経営状態は、はっきり判断材料に入っていた。理由は前職にある。設備投資にも金が回せないほど経営状態が悪い会社だった。だから次は、経営状態がしっかりしていて安心して働ける場所を求めた。

ただし、そのときに安心の材料にしていたものを正直に書くと、数字だけではない。エレベーターのあるオフィスで働けること。自動ドア。セキュリティカードでの入退室。オフィス街で働くこと自体への憧れもあった。規模の大きな案件に関わりたかったので、会社の規模と主な取引先は確認していた。

もうひとつ、判断基準にしていたことがある。技術を外部リソースに頼りきっている会社なのか、社内で内製して完結できる会社なのかである。自分たちの技術で客の課題を解決していく会社に惹かれていた。

そして、調べようがなくて諦めた項目もある。初任給に占める基本給の割合、管理職になったときの給与、在籍者の学歴の構成。応募の段階で調べる方法が見つからなかった。

経審の結果通知書は、当時見ていない。

いま振り返ると、見ようとしていたものの一部は、そこに載っていた。自己資本額と利益額は、経営状態を示す指標の一部である(前述のとおり審査基準日時点のものだ)。工種別の技術職員数は、技術を社内に抱えている会社かどうかを推し量る手がかりになる(ただしこれも、縦に足しても実人数にはならない)。取引先の構成までは載らないが、元請完成工事高が工種別に出るので、対象期間にその工種の元請完成工事高があったかどうかは分かる。

一方で、基本給の内訳も、管理職の給与も、在籍者の学歴も、通知書には載らない。調べようがなかったものの多くは、やはり調べようがない。

それでも、オフィスにエレベーターがあるかどうかで安心を測っていた時期に、自己資本額が公開されていたことは知らなかった。

まとめ

  • 経審を受けるのは、公共性のある建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者(建設業法27条の23)。建設会社が一律に受けるものではない

  • 経審の条文に結果を公表せよという規定は無い。建設業法13条の閲覧所の対象にも入っていない。公表は国土交通省と都道府県の委託を受けた事業として行われており、その趣旨は入札参加者選定の透明性と虚偽申請の抑止である

  • 通知書の「その他の審査項目(社会性等)」に、建退共・退職一時金または企業年金・法定外労災・各種認定・営業停止処分および指示処分の有無が載る

  • 令和8年7月1日施行の改正で、雇用保険・健康保険・厚生年金の項目は削除された。社会保険加入が建設業許可の要件になり、経審で重ねて評価する必要がなくなったためである

  • ただし公表データには改正前後が混在する。新旧区分の「1」が改正後の申請分にあたる。開く前に新旧区分と審査基準日を見る

  • 点数の高さは働きやすさではない。W点には防災協定・研究開発費・建設機械・ISOなどが含まれる。労働条件に関係するのはW1の区分である

  • 技術職員数は工種ごとの延べ数であり、縦に足しても実人数にはならない。完成工事高の平均年数も2年・3年の選択制である

  • 検索結果が0件の会社は珍しくない。施工管理の技術者を派遣・常駐させる形態の会社は出てこないことがある。0件の理由は検索結果からは判別できず、会社の良し悪しとは無関係である

求人票に書かれていない情報が、応募する前から公開されている。ただしそれは転職者のために作られた情報ではないので、知りたいことがそのまま載っているわけでもない。読めるのはどこまでかを分かったうえで開けば、面接の質問がひとつ具体的になる。

そして、この情報を見る順番には注意がいる。応募先を絞る段階で開いてこそ意味がある。内定が出てから確認しても、比較の材料としては遅い。

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