派遣会社を調べているとマージン率という数字に行き当たる。派遣料金のうち何割が会社に残るのか。低い会社を選べば自分の取り分が増えるように見える。
結論から言えば、マージン率から自分の給与は逆算できない。率は事業所単位・前事業年度・全業務の平均で計算される数字で、個人の賃金とは接点がない。
だが同じ公開表の別の欄には、接点のある情報がある。労使協定を締結しているかどうかだ。締結していれば、その協定の対象になる人の賃金には法令上の下限がある。額そのものは厚生労働省が毎年度公表しており、協定にどの選択が書かれているかを確認すれば、自分で検算できる。
マージン率は、会社の取り分ではない
計算式は法律に書かれている。派遣料金の平均額から賃金の平均額を引き、派遣料金の平均額で割る(労働者派遣法23条5項)。差額に入るのは派遣元の利益だけではなく、会社が負担する社会保険料や教育訓練費も含まれる。
厚生労働省の説明はこうだ。
マージンには、社会保険料、教育訓練費なども含まれているため、マージン率は低いほどよいというわけではなく、その他の情報と組み合わせて総合的に評価することが重要です。
「低いほどよい」を名指しで否定している。率の低さを売りにする説明を受けたら、そこは内訳を聞く側に回ったほうがいい。
内訳を出している会社もある。マージンから支払われるのは、使用者負担の社会保険料、有給休暇相当分、通勤交通費、教育訓練費、求人広告費、そして事務所費や社員の人件費といった運営費である(東京都労働相談情報センターの解説)。実際の公開表でも、採用費・原価・販売管理費といった区分で割合を示している例がある。同じ率でも、教育訓練に厚い会社と広告に厚い会社では中身が違う。率だけを並べても、その違いは見えない。
算定のルールは労働者派遣法施行規則18条の2第2項にある。前事業年度の実績であること、事業所ごとに計算すること、料金も賃金も派遣労働者一人一日当たりの平均額であること、小数点以下一位未満の端数は四捨五入すること。
先の東京都の解説は、これを噛み砕いてこう説明している。%表示なら小数点第2位を四捨五入する(27.478…%なら27.5%)。平均は単純平均ではなく加重平均で出す。1日8時間で1万円の人が2名、3万円の人が1名なら、(1万+1万+3万)÷3で数える。
読むときに効くのは、同じ項のただし書きのほうだ。
ただし、一の事業所が当該派遣元事業主の労働者派遣事業を行う他の事業所と一体的な経営を行つている場合には、その範囲内において同様の方法により当該割合を算定することを妨げない。
事業所ごとが原則だが、一体的な経営をしている事業所はまとめて算定してよい。だから「事業所別に出ているか」だけでなく「どの範囲をまとめた数字か」まで見ることになる。逆に、施工管理の派遣を行う会社には、コプロコンストラクションのように営業所ごとに資料を分けて出している例もある。分けて出ている場合は、自分の雇用を担当する事業所がどれなのかを先に押さえないと、他の営業所の数字を見ていることになる。
見るべきなのは、労使協定の欄
法23条5項が条文に挙げているのは、派遣労働者数・派遣先数・マージン率・教育訓練に関する事項までで、残りは省令に委ねられている。その省令が施行規則18条の2第3項で、料金の平均額・賃金の平均額に続けて、次の2つを挙げる。
三 法第三十条の四第一項の協定を締結しているか否かの別
四 法第三十条の四第一項の協定を締結している場合にあつては、協定対象派遣労働者……の範囲及び当該協定の有効期間の終期
派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針も、マージン率や教育訓練と並べてこの3点を常時インターネットで提供することを原則としている(第2の16)。
公開表に労使協定の記載があるのは会社の親切ではなく、法定の公開項目だからだ。そして待遇の話に接続するのは、率ではなくこちらである。
労使協定方式なら、賃金に下限がある
派遣労働者の待遇の決め方は2つある。派遣先の労働者との均等・均衡による方式(法30条の3)と、労使協定による方式(法30条の4)だ。締結していなければ前者で、その場合の比較対象は派遣先の労働者になるため、以下の計算は当てはまらない。公開表の三号を先に見るのはそのためである。
労使協定方式を選ぶ場合、賃金の決め方に条件が付く。
派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額となるものであること。(法30条の4第1項2号イ)
「厚生労働省令で定めるもの」は施行規則25条の9で、派遣就業の場所を含む地域において、同種の業務に従事し、同程度の能力及び経験を有する一般労働者の平均的な賃金額とされている。地域と職種と経験年数の3つで決まる、ということだ。
その具体的な額は、厚生労働省が毎年度の職業安定局長通達で示す。令和8年度分(職発0825第1号・令和7年8月25日)は2026年4月1日から2027年3月31日までに適用される。通達自身が「直近の統計調査等の結果等を踏まえ、毎年度更新する」と書いているので、下の数字は年度が変われば変わる。
方法:職種別の基準値(①)×能力・経験調整指数(②)×地域指数(③)
3つとも通達に数字が載っている。順に見る。
①職種別の基準値 — 表が2つある
ここが一番間違えやすい。基準値の表は別添1と別添2の2つあり、どちらを使うかは労使が選ぶ。別添1は賃金構造基本統計調査、別添2はハローワークの求人賃金(職業安定業務統計)が元になっている。
通達は「別添1又は別添2の職種の基準値のうち、協定対象派遣労働者が従事する業務と最も近いと考えられるものを選択すること」とし、職種ごとに使い分ける場合はその理由を労使協定に記載するよう求めている(第4の1(1))。
施工管理に関係する職種を並べると、こうなる。賞与込みの時給に換算した額(円)である。
| 表 | 職種(コード) | 3年 | 10年 | 20年 |
|---|---|---|---|---|
| 別添1 | 建築技術者(1091) | 1,964 | 2,246 | 2,792 |
| 別添1 | 土木技術者(1092) | 1,901 | 2,173 | 2,702 |
| 別添1 | 測量技術者(1093) | 1,576 | 1,802 | 2,241 |
| 別添2 | 建築施工管理技術者(00802) | 1,876 | 2,145 | 2,666 |
| 別添2 | 土木施工管理技術者(00805) | 2,023 | 2,313 | 2,876 |
| 別添2 | 電気工事技術者(00703) | 1,780 | 2,035 | 2,530 |
| 別添2 | 建築設計技術者(00801) | 1,837 | 2,101 | 2,611 |
| 別添2 | 土木設計技術者(00804) | 1,924 | 2,200 | 2,736 |
| 別添2 | 測量技術者(00807) | 1,607 | 1,838 | 2,285 |
出典:職発0825第1号 別添1・別添2(2026年9月9日確認)。0年・1年・2年・5年の値は同通達に載っている
別添2には「建築施工管理技術者」「土木施工管理技術者」という職種名がそのまま置かれている。そして、どちらの表を選ぶかで額が変わる。建築は別添1が3年相当で88円高く、土木は別添2が122円高い。同じ経験年数でも、会社がどちらを選んだかで下限が動く。
②能力・経験調整指数
表の3年・10年・20年は、基準値にこの指数を掛けた値である。勤続0年を100とする。
0年 100.0/1年 113.8/2年 121.8/3年 124.8/5年 133.6/10年 142.7/20年 177.4
出典:職発0825第1号 第2の1(1)②
自分が何年目相当に当たるかも労使協定に定められる。通達は、賃金が職務給である場合には業務の内容や難易度が勤続何年目に相当するかという観点で選ぶことが考えられる、としている。
③地域指数 — ここが施工管理では効く
派遣先の所在地で決まる。都道府県別なら全国計を100として、東京111.4、大阪107.4、愛知104.4、福岡96.4、宮城96.3。
出典:職発0825第1号 別添3
ただし通達は、都道府県別とハローワーク管轄別のどちらを選ぶかも労使に委ねている(第4の1(3))。同じ東京でも、ハローワーク別なら青梅107.5から新宿114.2まで幅がある。建築技術者・3年相当の1,964円に掛けると、2,112円から2,243円まで動く。どちらを使うかは協定に定められる。なお全国計の100.0を使うことは、就業場所を勘案したことにならないため認められない。
もう一つ、施工管理では避けて通れない論点がある。ここでいう「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」は、実際に働いている場所とは限らない。
例えば、派遣先の事業所が東京都にあるが、協定対象派遣労働者が実際に就業する場所が埼玉県である場合において、埼玉県の就業場所が上記の判断の結果、独立性や持続性を有していない場合については、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」は東京都である。(第1の3(1))
現場が埼玉でも、派遣先の本社機能が東京にあり現場に独立性がなければ、地域指数は東京で見る。本社と現場が別の県になるのは施工管理では普通のことで、しかも指数の差はそのまま下限の差になる。自分の協定がどちらの地域で計算されているかは、確認する価値がある。
掛け合わせても、それは一部でしかない
建築技術者・3年目相当・東京(都道府県別)なら、1,964円×111.4%=2,187.896円。通達は1円未満を切り上げるとしているので2,188円になる。
ただし、この2,188円は賃金全体の下限ではない。一般賃金は「基本給・賞与・手当等」「通勤手当」「退職金」の3本立てで、①×②×③で出るのは1つ目だけだ。残り2つは別に数える。
そして残り2つは、それぞれ複数の方式から労使が選ぶ。通勤手当は実費支給か79円方式かの2つ、退職金は退職手当制度で比較するか5%方式か中小企業退職金共済等かの3つである(第2の2・第2の3)。下の表は79円方式と5%方式を選んだ場合の数え方で、実費支給や退職手当制度を選んでいる会社では足し算の形にならない。
| 項目(79円方式・5%方式を選んだ場合) | 額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般基本給・賞与等 | 2,188円 | 第2の1(2) |
| +一般通勤手当 | 79円 | 第2の2(2) |
| +一般退職金(一般基本給・賞与等の5%・1円未満切上) | 110円 | 第2の3(2) |
比較する側の自分の賃金からは、時間外・休日・深夜の労働に係る手当は除いて数える(第1の3(1)(2))。また「基本給・賞与・手当等」は通勤手当と退職金を除いた額を時給換算したもので、こちらの端数は切り捨てである(第1の3(3)、第3の1)。
つまり、交通費込み・退職金前払い込みで提示された時給を2,188円と並べると、満たしていないのに満たしていると判断してしまう。3つを分けて数えるか、通達が認める合算の方式(第3の4)でどう扱われているかを協定で確認する。
電気・管・造園は、表によって扱いが変わる
別添1の職種一覧には、電気工事施工管理・管工事施工管理・造園施工管理という区分がない。建築技術者・土木技術者・測量技術者があるだけだ。だが別添2には電気工事技術者(00703)がある。別添2の隣の行が「電気・電子・電気通信製造技術者(通信ネットワーク・電気工事技術者を除く)」と書いているとおり、電気工事は別立ての職種として置かれている。
管工事と造園は事情が違う。別添2にも管工事・造園に対応する技術者の区分はなく、配管工、植木職・造園師といった技能職の区分があるだけである。施工管理の業務と「最も近い」職種を選ぼうとすると、当てはめに幅が出る。
どの表のどの職種を選んだかと、その理由は労使協定に記載される。電気・管・造園で働く人ほど、そこを確認する意味がある。基準値は職種によって数百円違い、それがそのまま下限の差になる。
教育訓練は、聞くものではなく説明されるもの
派遣元には、段階的かつ体系的な教育訓練の実施義務がある(法30条の2第1項)。公開表に研修欄があるのはこの制度が背景にある。
ここで多くの説明は「研修について質問しましょう」で終わる。だが指針はもう一歩先を書いている。
派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、労働契約の締結時までに教育訓練計画を説明しなければならないこと。(第2の2(5)ロ)
説明は求めて引き出すものではなく、契約前に受けるものとされている。受けていないなら、それは自分が聞き忘れたという話ではない。
このサイトの書き手は施工管理の現場を知らないが、転職そのものは当事者として通っている。入社の通知を受けたとき、人材部から福利厚生の冊子と、入社後の育成計画を記した日程表を渡されたことがある。対象資格の一覧も受け取ったと記憶している。自分から利用条件を聞き出したのではなく、会社側が自社の魅力として先に出してきたものだった。派遣の話ではないし、それで入社を決めたわけでもない。ただ、制度の案内というのは冊子や日程表という形を取って出てくる、ということは分かった。
派遣元の側は、体験に頼らなくても条文で言える。教育訓練の内容は法31条の2第1項の説明事項に含まれ(施行規則25条の14第2項4号)、その説明は書面の交付等その他の適切な方法によることとされている(同条1項)。
公開表の研修欄では、費用と賃金が別の列になっていることが多い。無償は受講料の話、有給は受講時間の賃金の話で、片方しか書かれていない表もある。なお指針は、計画に基づく訓練とは別に会社が自主的に行う訓練について、費用負担を実費程度に留めることが望ましいとしている(同ニ)。「資格取得支援あり」がどちらの話なのかで、意味がかなり変わる。
派遣先が途中で切れたときの扱い
公開表に「待機中の研修は有給」と書かれていても、それは研修を受けていない待機時間の話ではない。ここは別の条文が受け持つ。
指針は、派遣契約が期間の途中で解除された場合の順序を定めている。
新たな就業機会の確保ができない場合は、まず休業等を行い、当該派遣労働者の雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当の支払等の労働基準法……等に基づく責任を果たすこと。(第2の2(3))
労働基準法26条の休業手当は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に、平均賃金の60%以上を支払うものである(同法26条)。あらゆる待機期間に自動的に支払われるわけではなく、休業がどちらの都合によるものかで変わる。指針はさらに、労働契約が続いている有期雇用の派遣労働者について、労働者派遣が終了したことのみを理由として解雇してはならないとしている(第2の2(4)ロ)。
聞くなら、「仕事がないときはどうなりますか」ではなく「契約が途中で切れた場合と、期間満了で次が決まらない場合とで、賃金の扱いは変わりますか」と聞く。前者には「すぐ次を探します」で答えられるが、後者は制度の話なので、答えられるかどうかがそのまま出る。
説明を求めることは、権利として書かれている
ここまでの確認は、相手の善意に頼る必要がない。法31条の2が場面ごとに義務を定めている。
応募段階では、派遣労働者として雇おうとする相手に対し、賃金の額の見込みその他の待遇に関する事項を説明しなければならない(1項)。しかもこの説明は「書面の交付等その他の適切な方法」によることとされ、賃金の額の見込みについては、ただし書で書面の交付等の方法に限定されている(施行規則25条の14第1項)。口頭で濁される類の情報ではない。雇い入れる際には、労使協定方式で講じることとしている措置の内容を説明しなければならない(2項2号)。そして働き始めてからは、こうなる。
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者から求めがあつたときは、当該派遣労働者に対し、……待遇の相違の内容及び理由並びに第三十条の三から第三十条の六までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たつて考慮した事項を説明しなければならない。(4項)
そして5項がある。
派遣元事業主は、派遣労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
聞いたら気まずくなるのではないか、という不安に対して、法律が先回りしている条文である。
確認する順序
マージン率の数字そのものからは、ほとんど何も決まらない。公開表と協定を、この順で見る。
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労使協定を締結しているか(施行規則18条の2第3項3号)。していなければ均等・均衡方式で、比較対象は派遣先の労働者になる
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協定対象派遣労働者の範囲に自分が入るか、有効期間の終期はいつか(同4号)。終期が過ぎた日付のまま置かれている表もある(2026年9月9日時点で確認)。協定を結び直してページを更新していないだけの可能性が高く、社名を挙げて論じる筋の話ではないが、自分が見ている表については確かめる対象になる
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協定に書かれた選択——別添1か別添2か、どの職種コードか、何年目相当か、都道府県別かハローワーク別か(通達 第4の1)。加えて通勤手当と退職金をどの方式で確保しているか(第2の2・第2の3)。これが分かって初めて自分の下限を検算できる
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基本給・賞与・手当等/通勤手当/退職金の3つが、それぞれどう数えられているか(通達 第3)
そのうえで、提示された金額と並べる。下限を割っていれば説明を求める理由があり、上回っていれば、どれだけ上回っているかが分かる。求めること自体は法31条の2第4項に書かれた義務の裏返しで、それを理由に不利益な取扱いをすることは同5項が禁じている。
質問して返ってきたときは、答えの中身より答え方を見る。「うちは労使協定方式です」まで即答でき、職種と地域指数の選び方まで説明できる会社と、率の話に戻す会社がある。制度を踏まえて人を出しているかどうかは、そこに出る。
派遣で積む実務経験と、その証明の扱いは施工管理の派遣|1級は取れるが、実務経験を証明できるかに整理した。資格取得支援の費用が退職時にどう扱われるかは施工管理技士の資格取得費用|「辞めるなら返せ」と言われたときに見る5つの要素で扱っている。