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施工管理の退職日と社会保険料|月末退職で何が変わるか

公開日 2026-09-06調査番号 R-article-128

退職日は、たいてい会社と話して決まる。引き継ぎの都合、現場の区切り、有給の残り日数。そのどれもが「何日に辞めるか」を決める理由になる。

ただ、その一日は別のところにも効いている。最終月の給与から社会保険料が2か月分引かれることがあるのは、そのためだ。

この記事で扱うのは、退職日という日付が健康保険と厚生年金にどう効くのかという話である。先に書いておくと、これは「何日に辞めれば得か」という話ではない。退職前の勤務先で算定される分だけを見ても、総額の有利不利は判断できない。変わるのは、その月にどの制度の保険料を、どの経路で納めるかである。

最終給与から2か月分引かれることがある

まず、多くの人が最後の給与明細を見て感じることから始める。

日本年金機構が、この現象を自ら説明している。

月の途中で退職した場合 退職した日の翌日に厚生年金の被保険者資格を喪失することとなります。保険料は、資格喪失日が属する月の前月分まで納める必要があります。 なお、月の「末日」に退職した場合は、翌月1日が資格喪失日となりますので、退職した月分までの保険料を納める必要があります。この場合は、給与計算の締切日によって、退職時の給与から前月分と当月分の被保険者負担分が控除される場合があります。

「手取りが思ったより少ない」は気のせいではない。月末に退職して、給与計算の締切日の関係で前月分と当月分が重なると、最後の給与から2か月分が引かれる。制度の側にそう書いてある。

ではなぜ、月末かどうかで変わるのか。ここから先が本題になる。

喪失は「翌日」に起きる

健康保険と厚生年金では、資格を失う日が退職日そのものではない。

健康保険法36条である。

被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(その事実があった日に更に前条に該当するに至ったときは、その日)から、被保険者の資格を喪失する。 一 死亡したとき。 二 その事業所に使用されなくなったとき。 (三号・四号略)

厚生年金保険法14条も同じ構造をとる。

第九条又は第十条第一項の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(その事実があつた日に更に前条に該当するに至つたとき、又は第五号に該当するに至つたときは、その日)に、被保険者の資格を喪失する。 一 死亡したとき。 二 その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき。 (中略) 五 七十歳に達したとき。

「その事業所に使用されなくなつたとき」が退職にあたり、資格を失うのはその翌日である。3月31日に退職すれば、資格喪失日は4月1日になる。日本年金機構も手続きの説明でこの例をそのまま挙げている。

ただし括弧書きに例外がある。同じ日に別の事業所で資格を取得したときや、厚生年金で70歳に達したときは、その日に喪失する。「喪失日は必ず退職日の翌日」ではないので、そこだけ注意しておきたい。

保険料は「月」で数える

一方、保険料のほうは日ではなく月で数える。

健康保険法156条の1項は、保険料額を「各月につき」定めるとしたうえで、3項でこう書いている。

3 前二項の規定にかかわらず、前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない。

厚生年金も同じ考え方だが、条文の置き方が違う。まず被保険者期間の数え方を19条1項で決める。

被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する。

そのうえで81条2項が、保険料をその期間に対応させる。

2 保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする。

前月から続けて加入している人が退職するという通常の場合には、どちらも「資格を喪失した月」を数えない。健康保険は156条3項で不算定と書き、厚生年金は19条1項で被保険者期間から外して81条2項で徴収の対象から落とす。書き方は違うが、結論は同じところに着く。

ただし健康保険法156条3項は、冒頭に「前月から引き続き被保険者である者が」という条件を置いている。入社した月のうちに辞めた場合はこの条件に当たらないので、同じようには読めない。ここは後の節で、厚生年金についてだけ扱う。

前月から加入を続けている人では、1日で1か月分ずれる

ものさしが2本ある。喪失は「日」で決まり、保険料は「月」で数える。前月から続けて加入している人では、この2本が噛み合った結果が、月末退職と月末前日退職の差になる。

以下は前月から続けて加入している人が退職する場合の話である。入社した月のうちに辞めた場合は健康保険法156条3項の条件に当たらないので、同じようには読めない。

10月31日に退職すると、資格喪失日は11月1日である。10月は「資格を喪失した月」ではないので、10月分の保険料は算定される。

10月30日に退職すると、資格喪失日は10月31日になる。10月が「資格を喪失した月」にあたるので、10月分は算定されない。

前月から加入を続けている人の場合(退職前の勤務先で算定される範囲・総負担の比較ではない)

10月31日(月末)に退職

  • 資格喪失日11月1日
  • 10月は資格を喪失した月ではない
  • 退職前勤務先の10月分の保険料算定される
  • 10月に自分が立つ制度勤務先の健康保険・厚生年金
  • 退職後側の保険料別計算

10月30日(月末の前日)に退職

  • 資格喪失日10月31日
  • 10月は資格を喪失した月
  • 退職前勤務先の10月分の保険料算定されない
  • 10月に自分が立つ制度10月31日から別の制度の側に立つ
  • 退職後側の保険料別計算

この条件に当たる人では、1日ずれただけで1か月分が動く。求人票にも退職届にも書かれていない話である。

消えるのではなく、移る

ここでいちばん誤解されやすいところを先に潰しておきたい。

前の節を読むと「月末の前日に辞めたほうがいい」と受け取りたくなる。そうではない。

前月から続けて加入している人が10月30日に辞めれば、10月分の健康保険料と厚生年金保険料は勤務先経由では発生しない。しかし10月という月に、自分がどこにも属さないわけではない。10月31日から翌月の入社日までのあいだ、自分は別の制度の側に立っている。

すぐに次の会社に入るなら転職先の被保険者になる。空白があるなら、健康保険は国民健康保険、任意継続、家族の健康保険の被扶養者のいずれかになる。年金のほうは、条件によって国民年金の第1号被保険者、配偶者の扶養に入る場合は第3号被保険者になる。第1号には保険料の納付義務がある。

つまり、退職日をずらして変わるのは負担が消えるかどうかではなく、その月にどの制度の保険料を、どの経路で納めるかである。国民健康保険の保険料は自治体と前年の所得で決まり、任意継続は在職時の標準報酬月額をもとに計算される。転職先に入るなら転職先の保険料になる。総額はそれぞれ別の計算になるので、退職日だけを見て有利不利を言うことはできない。

日本年金機構の説明も、月末退職と月途中退職を「どこまでの月分を納めるか」という区分で書いているだけで、どちらが有利とは書いていない。

同じ月に入って辞めたときは、別の規定が働く

入社した月のうちに退職した場合、つまり資格の取得と喪失が同じ月に起きた場合は、厚生年金に専用の規定がある。

厚生年金保険法19条2項である。

2 被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を一箇月として被保険者期間に算入する。ただし、その月に更に被保険者又は国民年金の被保険者(国民年金法第七条第一項第二号に規定する第二号被保険者を除く。)の資格を取得したときは、この限りでない。

原則としてその月は1か月として数えられ、保険料がかかる。ただし書が効くのは、同じ月のうちにさらに厚生年金または国民年金の資格を取得したときである。

日本年金機構はその場合の実務まで説明している。

ただし、厚生年金保険の資格を取得した月にその資格を喪失し、さらにその月に厚生年金保険または国民年金の資格を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料の納付は不要となります。この場合、年金事務所から対象の会社あてに厚生年金保険料の還付についてのお知らせを送付します。厚生年金保険料の還付後、被保険者負担分は会社から被保険者であった方へ還付することになります。

還付は会社を経由して戻る。自分の口座に直接振り込まれるものではないので、退職した会社との連絡が切れていると気づきにくい。

なお、ここで書いたのは厚生年金だけの取扱いである。健康保険の一般被保険者について、入社した月のうちに退職した場合の実務上の取扱いを述べた公表資料は確認できなかった。そのため、この記事では健康保険についての結論も、厚生年金との比較も示さない。

任意継続の「20日以内」には、ただし書がある

退職後に健康保険をどうするかで、任意継続という選択肢がある。よく「20日以内に手続きしないと使えない」と説明される。条文はそこまで単純ではない。

健康保険法37条1項である。

第三条第四項の申出は、被保険者の資格を喪失した日から二十日以内にしなければならない。ただし、保険者は、正当な理由があると認めるときは、この期間を経過した後の申出であっても、受理することができる。

ただし書がある。期間を過ぎた申出でも、保険者が正当な理由を認めれば受理できる。

とはいえ「過ぎても大丈夫」と読むのも違う。判断するのは保険者であって、本人ではない。20日以内に出すのが原則で、遅れた場合に道が完全に閉じているわけではない、という程度に理解しておくのが正確だろう。

同じ37条の2項も、見落とすと効いてくる。

2 第三条第四項の申出をした者が、初めて納付すべき保険料をその納付期日までに納付しなかったときは、同項の規定にかかわらず、その者は、任意継続被保険者とならなかったものとみなす。ただし、その納付の遅延について正当な理由があると保険者が認めたときは、この限りでない。

申出が受理されても、初回の保険料を納付期日までに納めなければ、さかのぼって任意継続被保険者ではなかったことになる(ただし、納付の遅延について正当な理由があると保険者が認めた場合を除く)。手続きを済ませた安心感で最初の納付を落とすと、そこで切れる。

保険料の水準についても、誤解が多い。在職中は会社と折半しているので「任意継続は倍になる」と言われるが、上限の仕組みがある。健康保険法47条1項である。

任意継続被保険者の標準報酬月額については、第四十一条から第四十四条までの規定にかかわらず、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額をもって、その者の標準報酬月額とする。 一 当該任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額 二 前年(一月から三月までの標準報酬月額については、前々年)の九月三十日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(中略)を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

喪失時の標準報酬月額と、全被保険者の平均から算出した額の、いずれか少ないほうが基礎になる。給与が高かった人ほど、この上限が効く。ただし2項により、健康保険組合は規約で別の扱いを定めることができる。協会けんぽと組合で同じとは限らない。

建設業では、社会保険に入っていること自体が許可の基準になっている

ここまでは、どの業種でも同じ話である。建設業には、もう一枚だけ別の層がある。

建設業法7条は許可の基準を定めていて、その1号がこうなっている。

一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。

この「国土交通省令で定める基準」が、建設業法施行規則7条である。1号に経営業務の管理責任者に関する基準が置かれ、その次の2号がこう定める。

二 次のいずれにも該当する者であること。 イ 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第三項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第十九条第一項の規定による届書を提出した者であること。 ロ 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第六条第一項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法施行規則(昭和二十九年厚生省令第三十七号)第十三条第一項の規定による届書を提出した者であること。 ハ 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第五条第一項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第百四十一条第一項の規定による届書を提出した者であること。

健康保険、厚生年金、雇用保険の3つである。社会保険に入っていることが、「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」の側に置かれている。福利厚生の充実度としてではなく、許可を出せるかどうかの基準としてだ。

国土交通省は施行時期を明記している。

令和2年10月1日より、建設業の許可・更新において社会保険の加入が要件化されました。

同じ施行規則の13条の12には、建設業法20条1項が求める「適正な施工を確保するために不可欠な経費」として、次の3つが挙げられている。

一 法定福利費(建設工事に従事する者の健康保険料等の事業主負担額をいう。) 二 安全衛生経費(中略) 三 建設業退職金共済契約(中略)に係る掛金

会社にとっての社会保険料は、見積りから落としてはいけない経費として位置づけられている。

そして、この保険の記録は入社のときにも顔を出す。監理技術者制度運用マニュアルは、直接的な雇用関係を確認する資料として健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書を挙げている。会社が公共工事で技術者を専任で配置するとき、その人が本当に在籍しているかを示す資料のひとつがこれである。詳しくは入社日と専任義務の記事で扱った。

辞めるときに動く保険の記録は、入るときに在籍の証拠になる書類でもある。

なお、建設業法7条2号にあった「専任技術者」は、令和6年の改正で「営業所技術者」という名称に変わっている。古い解説を読むときは用語がずれる。

退職日を決めるときに、何を確認しておくか

ここまでを整理すると、退職日という日付が触れているものは3つある。

1つ目は、資格を失う日。退職では原則として翌日である(同じ日に再取得したときなどの例外がある)。

2つ目は、その月の保険料を勤務先経由で払うかどうか。前月から続けて加入している人なら、退職前の勤務先でその月分を算定するかどうかが、月末かどうかで変わる。

3つ目は、その月に自分がどの制度の側に立つか。ここは退職日だけでは決まらず、次の入社日との組み合わせで決まる。

会社と退職日を相談するとき、この3つ目までを持ち出す必要はないだろう。ただ、日付が決まったあとで保険の切替えを知らされる順番になっていると、選べたはずの選択肢が過ぎていることがある。任意継続の20日は、資格を喪失した日から数える。

退職金や賞与の扱いについては、同じ「辞める日」が別の意味を持つ。賞与の支給日在籍要件は賞与と退職日の記事で、住民税の徴収方法の切替えは退職と住民税の記事で扱っている。資格喪失届の提出期限など、辞めたあとに会社が負う義務については建退共と退職金の記事にも触れている。

私が迷ったのは、10月31日と11月30日だった

ここまで制度の話を書いてきたので、自分の場合を書いておく。

私が会社を辞めたのは11月30日である。9月末に退職を申し出て、最終出社日は11月28日頃だった。研修のため有給休暇中に前泊で移動する必要があり、その日に備品を返している。次の会社に入ったのは12月1日で、空白の日は一日もなかった。

入社日を決めるとき、保険や年金のことは考慮に入れていない。新しい環境で早く仕事をしたいという気持ちのほうがはるかに強かった。結果として空白がゼロになったのは、意図した結果ではない。

そして、最終月の給与明細を見て控除額について気づいたことは、何もなかった。

いま振り返ると、私は月末退職の当事者だった。この記事の前半に書いたとおり、前月から続けて加入していた人が月末に辞めれば、退職前の勤務先では退職した月の分まで算定される。給与計算の締切日によっては、最後の給与から2か月分が引かれる。その可能性がある側にいながら、明細を見て何も思わなかった。

もうひとつ、書いておきたいことがある。退職日にはもうひとつの候補があった。10月31日である(なぜその日が候補になり、なぜ1か月動かしたのかは入社日と専任義務の記事に書いた)。

つまり私が比べていたのは、10月31日と11月30日である。どちらも月末だ。

1か月動かすかどうかは、真剣に検討している。それなのに、1日動かすという軸は、検討の対象として存在していなかった。

では、当時これを知っていたら何か変えていたか。変えなかったと思う。退職日を保険料だけから逆算することはせず、空白のない転職のほうを取ったはずだ。ただしそれは、2つの日程の総負担を比べたうえでの判断ではない。どちらが有利だったかは、いまも計算していない。

だから、これは「知らなくて損をした」という話ではない。1か月の議論はしたのに、1日という軸だけが存在しなかったという話である。

まとめ

  • 健康保険・厚生年金の資格を失うのは退職日の翌日である(健康保険法36条2号、厚生年金保険法14条2号)。ただし同日に再取得したときなど、括弧書きの例外がある

  • 保険料は月単位で数え、前月から続けて加入している人が退職する通常の場合、資格を喪失した月の分は算定しない(健康保険法156条3項、厚生年金保険法19条1項・81条2項)。健康保険法156条3項は「前月から引き続き被保険者である者」という条件つきである

  • この2本のものさしが噛み合うため、前月から続けて加入している人では、月末に辞めるかその前日に辞めるかで1か月分が動く

  • ただし変わるのはどの制度の保険料を、どの経路で納めるかであって、負担が消えるわけではない。その月は国民健康保険・任意継続・家族の被扶養者・転職先の制度のいずれかの側に立つ。退職前の勤務先で算定される分だけを見て、総額の有利不利は判断できない

  • 入社した月に退職した場合、厚生年金は原則としてその月を1か月として数える。同じ月にさらに厚生年金または国民年金の資格を取得したときだけ、納付が不要になる(厚生年金保険法19条2項ただし書)。還付は会社を経由する

  • 任意継続の20日にはただし書があり、正当な理由があると保険者が認めれば期間経過後の申出も受理されうる。一方で初回保険料を納付期日までに納めないと、さかのぼって任意継続被保険者でなかったことになる(正当な理由を保険者が認めた場合を除く)

  • 建設業では、健康保険・厚生年金・雇用保険への加入が建設業許可の基準に置かれている(建設業法7条1号、同施行規則7条2号。令和2年10月1日から)

退職日は、引き継ぎと現場の都合で決まることが多い。それでいいと思う。この記事は、退職日を保険から逆算しようという話ではない。

ただ、日付を動かすかどうかを検討しているとき、動かし方の軸が一つしかないことがある。私の場合は「1か月」だけだった。その横に「1日」という軸があったことを、あとから知った。選ぶかどうかは別として、軸が見えているかどうかは違う。

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