「施工管理は年収が高い」とよく言われる。公的統計で確かめると、施工管理を含む技術者区分は一般労働者全体より確かに高い。ただし「平均641.6万円」という一つの数字は、年代も、地域も、会社の規模も潰した値であり、そのままでは自分の現在地を測る物差しにならない。
ここでは厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年)の原表から、年代別・企業規模別・都道府県別を取り出して検証する。先に結論を言えば、年代で開くと約422万円の幅があり、企業規模による差は20代後半から明確に現れて、50代後半では339.7万円に達する。平均という一つの数字からは見えない構造がある。
賃金構造基本統計調査に「施工管理」の賃金区分はない
前提を確認しておく。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)には「建築施工管理技術者」という職業分類がある。しかしそこに載る年収は、賃金構造基本統計調査の建築技術者の値がそのまま使われている。つまり職業の名前としては存在しても、施工管理だけを抜き出して測った賃金統計は無い。
賃金構造基本統計調査で施工管理が含まれるのは建築技術者と土木技術者という技術者区分で、ここには施工監督のほか、設計・積算などに携わる技術者も入る。
この記事の金額はすべてこの2区分の値だ。施工管理職だけを抜き出した数字ではない——この点は最後まで付いて回るので、最初に押さえておいてほしい。それでも、施工管理の年収を公的データで語ろうとするとき、現状これが最も近い代理値になる。
電気・管・造園については、この記事では金額を出さない。対応する公的職種区分が存在しないためだ。賃金構造基本統計調査の「電気工事従事者」「配管従事者」は技能職であって施工管理技術者ではなく、厚生労働省の職業情報提供サイト上も「管工事施工管理技士」は建築施工管理技術者の別名、「造園施工管理技術者」は土木施工管理技術者の別名として扱われ、独立した統計値を持たない。ネット上で見かける「電気工事施工管理の年収◯◯万円」は、別区分の値を流用したものである可能性が高い。
建築技術者・土木技術者は、一般労働者全体より高い
令和6年の同調査(産業計・民営事業所・一般労働者・男女計・企業規模10人以上)で、年収は次のとおりだ。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出している。
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建築技術者:641.6万円(平均年齢43.6歳・約41.3万人)
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土木技術者:596.5万円(平均年齢46.0歳・約30.9万人)
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一般労働者全体:527.0万円
建築技術者は全体より約115万円高く、倍率にして1.22倍。土木技術者は約70万円高く1.13倍だ。同じ調査の同じ定義で比べているので、この差自体は確かなものとして扱える。
ただし前節のとおり、この2区分には設計・積算の技術者も含まれる。ここから言えるのは「施工管理を含む技術者区分が全体より高い」ところまでで、「施工管理職だけを取り出しても高い」までは、この統計からは確認できない。
年代別に開くと約422万円の幅がある
同じ調査には、職種を年齢階級で開いた表がある(職種第5表)。建築技術者・土木技術者の年代別は次のとおりだ。
| 年齢階級 | 建築技術者 | 土木技術者 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 378.1万円 | 381.1万円 |
| 25〜29歳 | 508.6万円 | 501.3万円 |
| 30〜34歳 | 604.8万円 | 536.4万円 |
| 35〜39歳 | 674.9万円 | 654.0万円 |
| 40〜44歳 | 704.9万円 | 629.9万円 |
| 45〜49歳 | 734.1万円 | 680.7万円 |
| 50〜54歳 | 773.6万円 | 690.2万円 |
| 55〜59歳 | 800.4万円 | 722.3万円 |
| 60〜64歳 | 732.0万円 | 608.1万円 |
建築技術者では、20〜24歳の378.1万円と55〜59歳の800.4万円のあいだに約422万円の開きがある。「平均641.6万円」はこの全体を1つに潰した値なので、20代の人が自分と比べても、50代の人が自分と比べても、ずれる。比べるなら自分の年齢階級の行を見るのが正しい。
この表の読み方には注意が要る。これは2024年時点で各年齢階級にいる人たちを横に並べて比べたものであって、同じ人を追跡した記録ではない。「20〜24歳と25〜29歳のあいだに130.5万円の差がある」とは言えるが、いま22歳の人が5年後に130.5万円上がると読むことはできない。年代間の差には、世代ごとの採用環境や在籍する会社の構成の違いも混ざっている。
そのうえで、階級間の差として次の3点が読み取れる。
1. 階級間の差が最も大きいのは20代前半と20代後半のあいだ 建築技術者は20〜24歳378.1万円、25〜29歳508.6万円で、その差は130.5万円。続く4区間は差が縮み続ける(96.2万円 → 70.1万円 → 30.0万円 → 29.2万円)。ただしその先は再び開き、45〜49歳と50〜54歳のあいだでは39.5万円に戻る。単調に縮んでいくわけではない。
2. 建築と土木で形が違う 30〜34歳では建築604.8万円に対し土木536.4万円で68万円の差があるが、35〜39歳では建築674.9万円・土木654.0万円と差が21万円まで縮まる。土木は40〜44歳(629.9万円)が35〜39歳(654.0万円)を下回っており、階級順に単調増加していない。
3. 最も高いのは55〜59歳 両区分とも55〜59歳が最高で、60代に入ると下がる。
繰り返しになるが、これは建築技術者・土木技術者という技術者区分の値であって、施工管理専従の年収ではない。ネット上に並ぶ「施工管理の年代別年収」の多くは出典が示されていないが、今回確認した令和6年調査の公表表の範囲では、施工管理だけを抜き出した年代別の数値は見あたらない。それらの数字がどこから来ているかは確認しようがない。出典が書かれていない年代別の相場表は、この表と照らして確からしさを確かめてほしい。
企業規模による差は、20代後半から明確に現れる
職種第5表は、年齢階級ごとに企業規模別の値も載せている。建築技術者について並べると、次のようになる。
| 年齢階級 | 1,000人以上 | 100〜999人 | 10〜99人 | 3区分の最大差 |
|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 386.7万円 | 402.5万円 | 353.1万円 | 49.4万円 |
| 25〜29歳 | 538.6万円 | 540.8万円 | 444.2万円 | 96.6万円 |
| 30〜34歳 | 656.9万円 | 621.1万円 | 551.7万円 | 105.2万円 |
| 35〜39歳 | 774.2万円 | 686.6万円 | 599.9万円 | 174.3万円 |
| 40〜44歳 | 817.2万円 | 746.5万円 | 620.5万円 | 196.7万円 |
| 45〜49歳 | 851.0万円 | 755.0万円 | 675.3万円 | 175.7万円 |
| 50〜54歳 | 899.9万円 | 809.5万円 | 676.3万円 | 223.6万円 |
| 55〜59歳 | 1,010.2万円 | 805.0万円 | 670.5万円 | 339.7万円 |
読み取れることは3つある。
1. 20代前半だけは、1,000人以上が最も高いわけではない 20〜24歳は100〜999人の402.5万円が最も高く、1,000人以上は386.7万円で下回る。3区分の最大差も49.4万円で、他の年代に比べれば小さい。
2. 差は20代後半にはもう開いている 25〜29歳で最大差96.6万円、30〜34歳で105.2万円。「若いうちはどこで働いても同じ」と一般化することは、少なくともこの表からはできない。ただしこれは2024年時点の各年齢階級の観測差であって、いま20代前半にいる人が数年後にこの差を経験するかどうかは、この統計からは言えない。
3. 概ね広がるが、単調ではない 40〜44歳の196.7万円に対し45〜49歳は175.7万円と、いったん縮む区間がある。全体としては年代とともに広がり、55〜59歳で339.7万円が最大になる。この年代では1,000人以上が1,010.2万円に達する一方、10〜99人は670.5万円で、45〜49歳の675.3万円からほぼ横ばいだ。
これは年代間の横断比較なので、「同じ人が大企業に居続ければこうなる」とは読めない。読み取れるのは、2024年時点で各年齢階級にいる人たちのあいだに、企業規模による差がこれだけあるということまでだ。
なお、企業規模計で見た場合の人数分布も押さえておきたい。建築技術者41.3万人のうち18.4万人(約45%)が10〜99人規模、土木技術者では30.9万人のうち19.7万人(約64%)がそうだ。全国平均は、人数の少ない大企業層に押し上げられている。最も人数が多い10〜99人規模の値(建築584.0万円・土木560.3万円)は、全国平均を建築で57.6万円、土木で36.2万円下回る。
都道府県では340万円の開きがある
同じ調査の都道府県別データ(職種特掲・産業計)で見ると、地域差も大きい。
建築技術者は最高が福岡県の736万円、最低が宮崎県の396万円で、その差は340万円。47都道府県の中央値は565万円で、全国平均641.6万円を上回るのは8県だけだ。残る39県は全国平均を下回る。
土木技術者は最高が大阪府の699万円、最低が高知県の447万円。中央値は562万円で、全国平均596.5万円を上回るのは14県となる。
全国平均を基準に「自分は平均より低い」と判断するのは、多くの県では正しくない。比べるべきは自分の県の値だ。
公表されている組み合わせと、されていない組み合わせ
ここまで3つの軸を見てきたが、すべての組み合わせが公表されているわけではない。以下は、今回確認した令和6年調査の都道府県別グループ45件および関連する職種・産業表の範囲での整理である。この調査の全公表表を網羅したわけではない。
公表されている
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職種 × 年齢階級(職種第5表)
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職種 × 企業規模(職種第1表・第5表)
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職種 × 年齢階級 × 企業規模(職種第5表。前節の表がこれにあたる)
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職種 × 都道府県(都道府県別 表3)
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都道府県 × 年齢階級 × 企業規模(都道府県別第1表)— ただし産業計であって、職種の内訳がない
公表されていない
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職種 × 都道府県 × 企業規模
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職種 × 都道府県 × 年齢階級
都道府県と職種を組み合わせた表(都道府県別第2表・第3表)には企業規模も年齢階級の内訳も付いておらず、
年齢階級や企業規模で開ける都道府県別第1表のほうには職種の内訳がない。この2つが交わる表は、今回確認した範囲では見あたらなかった。
したがって「建築技術者の、東京の、1,000人以上企業の、30代前半」に相当するセルは、今回確認した範囲には無い。掛け算や按分で推定すれば数字は作れるが、それはどの表にも対応しない合成値であって、公的統計を引いたことにはならない。都道府県の値は、年代・企業規模とは別立ての参考値として扱うのが、この統計でできる限界であり、同時に正しい使い方でもある。
自分の現在地は3つの数字と並べて見る
平均と比べる代わりに、次の3点を用意する。
1. 現在の額面年収 賞与を含めた実額。給与明細の月額×12+賞与で算出する。統計側と同じ定義に揃えないと比較にならない。
2. 自分の年代 × 勤め先の企業規模の値 前節のとおりこの2軸は同時に公表されているので、表から1つのセルを直接読める。建築か土木かで見る表が変わる。
3. 自分の県の値 これは別立ての参考値として、上とは分けて見る。
この3点を並べると、「平均より低い」ではなく「年代と規模で見た水準に対して高いか低いか」「県の水準と比べてどうか」という2方向の比較ができる。年収を上げる打ち手は、地域を動かすのか、企業規模を動かすのか、資格や役割で評価を取りにいくのかで変わるため、この切り分けが先にないと選べない。
なお、求人票に書かれた年収レンジの上限は、その企業のモデルケースを示していることがある。実際の金額が確定するのは内定後の条件提示のタイミングだ。年収を動かす目的で転職するなら、応募の段階ではなくその局面に照準を合わせておきたい。
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年収を上げる具体的な打ち手は施工管理の年収を上げる方法で、内定後の条件交渉の進め方は施工管理が転職で年収を上げるための交渉術で扱っている。年代ごとの考え方は施工管理30代の年収相場・施工管理40代の年収相場もあわせて参照してほしい。
出典
本記事の金額はすべて厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和6年(2024年)から算出した。対象は民営事業所・一般労働者・男女計・産業計で、企業規模は別記のない限り10人以上。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算し、0.1万円未満を十進で四捨五入している。
使用した表は次の3つ。
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職種第1表「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」— 全国値・企業規模別
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職種第5表「職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」— 年代別・年代×企業規模別
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都道府県別 表3「都道府県、職種(特掲)、性別」— 都道府県別
建築技術者・土木技術者は施工管理を含む技術者区分であり、施工管理職のみを抽出した数値ではない。
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厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(e-Stat 政府統計の総合窓口)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001225453
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確認日:2026年9月5日
※本記事の内容は公的統計と著者の情報収集に基づく見解です。個別の状況によって結果は異なります。
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