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編集部調査報告書

書類・面接

調査番号
R-article-111
公開日
2026-08-15

施工管理の経歴詐称|職務経歴書の「盛る」はどこから

施工管理の職務経歴書の書き方を調べると、どのメディアも同じことを言う。担当した現場の延床面積を書け。工事金額を書け。統括した職人の人数を書け。数字で規模を示せ、と。

そのとおりに書いて、そして手が止まる。この現場は本当に自分が回したと言えるのか。上長が仕切っていた案件を「担当」と書いていいのか。少し大きめに書いた数字は、どこから嘘になるのか。

この記事は、その線引きを法律の側から引く。そして施工管理の場合、資格の一行だけは他の職種とまったく違う重さを持つことも書く。

発生率の統計は存在しない。だが国が公表した実数はある

先に断っておくと、経歴詐称の発生率や発覚率について、一次資料で確認できる調査データは見つからなかった。「経営者の8割が遭遇」「発覚率5〜10%」といった数字はいくつも流通しているが、調査主体・調査時期・対象数を公表ページまで辿れるものが無い。だからこの記事では使わない。

代わりに、国土交通省が公表した実数がある。技術検定の不正受検をめぐって設けられた検討会の資料に、企業名と人数が並んでいる。

  • 大和ハウス工業:現職社員の資格保有者4,189名のうち、実務経験に不備のあった者357名。不備者を主任技術者・監理技術者として16現場、専任技術者として4営業所に配置していた

  • 西武建設・西武造園:社員65名に実務経験の不備。3現場に監理技術者、3営業所に専任技術者として配置

  • 水道機工・水機テクノス:受検履歴のある現職役職員285名のうち、実務経験に不備のあった受験者181名

(出典:国土交通省「技術検定不正受検防止対策検討会【提言】参考資料」令和2年11月10日公表)

同じ資料は、なぜそれが起きたかも書いている。

課⾧昇格の要件として、建築施工管理技士のほか、さらに他1種類の施工管理技士資格の取得を要件化

他の施工管理技士の資格取得への祝金の増額

監理技術者になり得る資格の取得を強く推進する通達を発出

つまりこれは、個人が倫理を欠いて起こしたことではない。会社が制度で押した結果である。施工管理という職種には、経歴を大きく見せる圧力が構造的にかかっている。あなたが今、書いた数字を前にして落ち着かないのは、その圧力を受けている証拠であって、あなたの弱さではない。

線引きの基準は「同じ条件で採用したか」にある

では法律はどこで線を引いているのか。

大阪高裁が、経歴詐称を理由とする懲戒解雇の事案で「重要な経歴」の定義を置いている(昭和35(ネ)1375・昭和37年5月14日判決)。

その前歴詐称が事前に発覚したとすれば、使用者は雇入契約を締結しなかつたが、少なくとも同一条件では契約を締結しなかつたであろうと認められ、かつ、客観的にみても、そのように認めるのを相当とする、前歴における、ある秘匿もしくは虚偽の表示

この事案は、最終学歴が高等小学校卒であるのに市立中学校卒と申告していたもので、中学校卒として扱われた結果、賃金の過払いが実際に生じていた。判決はその過払い額まで認定している。

基準は「嘘かどうか」ではなく「その嘘がなければ、同じ条件で採用しただろうか」である。

この基準を施工管理に当てはめると、二つが分かれる。

**資格は、まっすぐこの基準に当たる。**施工管理技士の有無は、資格手当の額にも、任せられる工事の範囲にも直結する。賃金規程に明示されている会社も多い。持っていない資格を書けば、それは「同一条件では契約しなかった」に真正面から該当する。

**現場の規模や統括人数は、そうとは限らない。**延床面積を実際より大きく書いたとして、それが賃金や格付けをどう動かしたかを示すのは難しい。まったく問題ないという意味ではないが、法的な構造としては資格とは別のところにある。

同じ判決は、詐称があっただけでは懲戒できないとも言っている。

経歴の詐称行為が懲戒処分の事由たるには、右詐称行為が雇入契約締結の際、信義則に違反してなされたというだけでは足らず、労務者の容態によつてその後引続き使用者の欺罔状態が継続し、具体的に企業秩序違反の結果を生ぜしめたことが必要である

書いた時点で完結する話ではない、ということである。

職務経歴書そのものの組み立て方は施工管理の職務経歴書の書き方とサンプルにまとめている。

聞かれたことに嘘をつくのと、聞かれないことを書かないのは違う

もう一つ、押さえておくべき枠組みがある。三菱樹脂事件の最高裁大法廷判決(昭和48年12月12日・民集27巻11号1536頁)である。

企業者が、労働者の採用にあたつて適当な者を選択するのに必要な資料の蒐集の一方法として、労働者から必要事項について申告を求めることができる…相手方に対して事実の開示を期待し、秘匿等の所為のあつた者について、信頼に値しない者であるとの人物評価を加えることは当然であるが、右の秘匿等の所為がかような人物評価に及ぼす影響の程度は、秘匿等にかかる事実の内容、秘匿等の程度およびその動機、理由のいかんによつて区々であり、それがその者の管理職要員としての適格性を否定する客観的に合理的な理由となるかどうかも、いちがいにこれを論ずることはできない

読み取れることは二つある。

一つは、問題になるのは企業が申告を求めた事項についての秘匿や虚偽だということ。聞かれてもいないことを書かなかったからといって、それ自体が同じ土俵に乗るわけではない。

もう一つは、最高裁自身が「いちがいにこれを論ずることはできない」と言っていることだ。秘匿の内容・程度・動機によって結論は変わる。一律の答えは無い。

後から見つかった詐称は、その懲戒解雇の理由にできない

ここは、多くの記事が逆を書いている。「入社後に発覚すれば懲戒解雇」と。

さいたま地裁の判決を見ておきたい(平成12(ワ)2164・平成17年9月30日)。被告は建築工事・土木工事の企画、設計、請負施工及び監理を目的とする株式会社、つまり建設業である。

原告は履歴書で、短大卒であるのに法政大学経済学部卒と記載し、前職での解雇歴と敗訴判決を秘匿し、社名を書き換えていた。裁判所はこの虚偽記載を認定している

そのうえで、こう言った。

懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである

会社が懲戒解雇を決めた時点でその事実を知らなかったのだから、後から出てきたものを理由に足すことはできない、という理屈である。

ただし、ここで安心してはいけない。**この事案では、普通解雇としては有効とされている。**懲戒解雇という重い処分の理由にはできなかったが、雇用関係が続いたわけではない。

施工管理の資格詐称だけは、労働法の外側に出る

ここからが、他の職種の経歴詐称記事には出てこない話である。

施工管理技士の資格について虚偽の実務経験を申告した場合、影響は本人の雇用にとどまらない。転職先の会社が営業停止処分を受ける。

国土交通省「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(最終改正 令和8年1月28日・国不建第172号)にこうある。

技術検定の受検又は監理技術者資格者証の交付申請に際し虚偽の実務経験の証明を行うことによって、不正に資格又は監理技術者資格者証を取得した者を主任技術者又は監理技術者として工事現場に置いていた場合には、30日以上の営業停止処分を行うこととする。

本人の側にも、建設業法上の不利益が別に用意されている。建設業法施行令第41条である。

国土交通大臣は、不正の手段によつて技術検定を受け、又は受けようとした者に対しては、合格の決定を取り消し、又はその技術検定を受けることを禁止することができる。

同条第3項は、その禁止期間を「三年以内の期間を定めて」と定める。

整理すると、資格の一行はこの四つに連動する。

現場の規模を大きめに書くことと、持っていない資格を書くことは、まったく別の話である。前者は職務経歴書の中で完結するが、後者はあなたを採用した会社の営業に穴を開ける

ちなみに、裁判所ウェブサイトの裁判例検索で「資格詐称」を検索すると0件である。「施工管理技士」で出てくる10件も、損害賠償や行政事件で、労働事件ではない。施工管理技士の資格詐称を扱った労働裁判例は、公表されている範囲には見当たらない。誰も書いていないのは、誰も裁判にしていないからかもしれないし、そもそも露見した時点で争う余地が無いからかもしれない。

自分が書いたものから、どんな人物が立ち上がるかは、自分には見えない

ここから、私自身が転職活動で職務経歴書を書いたときの話をする。現場の話ではなく、机の前で何を考えたかの話である。

私の基準はこうだった。担当として扱っていた案件は、引き継いだ案件であっても書いた。一方で、**上長がメインで回していて自分がサポートに入った案件は、一切書かなかった。**理由は単純で、自分がメインで回した案件だけで職務経歴書が十分に埋まったからである。

これは条件付きの判断だと思っている。もし年齢が若いなどの理由でメインの案件だけでは埋まらないなら、上長のサポートに入った実績でも、その旨を明記したうえで書く分には問題ないはずだ。書かないことが正しいのではなく、実態と違う見え方にしないことが要る、というだけである。

サポート実績を、まるで自分がメインで回したかのように書けばどうなるか。二つ起きる。面接で深く突っ込まれたときにボロが出る。そしてもっと厄介なのは、採用後のミスマッチになることだ。法的にセーフでも、入った先で困るのは自分である。

エージェントからは「嘘はダメだが、もっと自己主張して大きく書いていい」と言われた。この言い方は正確だと思う。エージェント自身も自分の身を守る必要があるから、「嘘を書きなさい」とは絶対に言わない。そのうえで、自分がしてきたことをしっかり棚卸しして書け、と助言してくる。「エージェントに相談しよう」で終わらせず、助言がどの位置から出ているかまで見ておいたほうがいい。

そして、私が実際にやったことのうち、いちばん効いたのはここから先である。

職務経歴書は、自分で自分の業務を理解して書いている。だから**外部の人間が読んだときに本当に内容が伝わるかを、自分では客観的に判断できない。**まずは粒度を細かく、具体的に書くことを意識した。そのうえで、エージェントと知人、それから妻にも読んでもらった。

このとき、単に「読んでおかしくないか」を聞いたのではない。**書かれた内容から読み取れる「私の人物像」を、逆にフィードバックしてもらった。**そしてそのイメージが、実際の自分と乖離していないかを確認した。

やってみて分かったのは、これが先ほどの法的基準の裏返しだということである。「事前に発覚していれば同一条件では契約しなかっただろう」という基準は、結局のところ採用側の頭の中に立ち上がった人物像で条件が決まるという話だ。だとすれば、検証すべきは一行ずつの正確さではなく、全体から立ち上がる像のほうになる。

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面接で詰められるのは、数字ではなく理由だった

書いたものを持って面接に行くと、想像とは違うことが起きた。

**数字の実績そのものは、意外とさらりと触れられる程度で済むことが多かった。**代わりに必ずセットで聞かれたのは、理由のほうである。数字が目標に届かなかったのはなぜか。逆に、なぜこの年は達成できたのか。プラスとマイナスの両側から、理由を問われた。

だから準備するなら、「なぜ達成できたのか」「なぜ未達だったのか」を対比して説明できるようにしておくといい。

このことは、盛る/盛らないの判断にもそのまま効く。**危ないのは数字が大きいことではなく、その数字の理由を自分の言葉で説明できないことだ。**理由が語れない数字は、そこだけ人物像から浮く。面接官が見ているのは、たぶんそこである。

なお、私の面接では職務経歴書とは無関係に、専門用語の理解を問う質問もあった。基礎知識の有無を確認する意図だったと思う。退職理由は、突っ込まれたというより必ず聞かれる項目だった。ここは事前にエージェントとしっかり話し合って整理していたし、特に隠す理由でもなかったので、ありのままを論理的に説明した。退職理由の組み立て方は施工管理の転職理由の伝え方に詳しく書いている。

嘘は、入社日に構造的に露見する

最後に、書類の話をしておく。

厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、採用時の提出書類にこう挙げている。

資格証明書の写し(ただし、何らかの資格証明書を有する場合に限る。)

そして同規則の第68条第2項第1号は、懲戒解雇の事由に「重要な経歴を詐称して雇用されたとき。」を置いている。これは労働基準法第89条第9号(制裁の定めをする場合はその種類と程度を就業規則に記載する)を受けた、国の標準文言である。

ただし同項の柱書にはただし書がある。

ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第53条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

懲戒解雇一択ではない、と国の標準規則自身が書いている。

そのうえで、施工管理には固有の事情がある。監理技術者資格者証には所属建設業者名が記載され、変更があれば30日以内に届け出る義務がある(建設業法施行規則第17条の34第1項・第17条の36第1項)。資格と所属は、公的な記録として残る。この点は施工管理のリファレンスチェックで詳しく扱った。

つまり資格に関する嘘は、発覚するかどうかの問題ではない。入社手続きの中で、構造的に突き合わされる。

まとめ

  • 経歴詐称の発生率・発覚率について、一次確認できる調査データは存在しない。流通している数字は出典を辿れない

  • 一方、国交省の検討会資料には実数がある。大和ハウス工業357名、西武建設・西武造園65名、水道機工・水機テクノス181名。昇格要件化や祝金といった会社側の制度が背景にあったと同資料が記している

  • 法的な線引きは「嘘かどうか」ではなく「その嘘がなければ同一条件で採用しただろうか」(大阪高判 昭37.5.14)。賃金や格付けに直結する資格はこの基準に真正面から当たるが、現場規模の誇張は同じようには当たらない

  • ただし詐称があっただけでは足りず、欺罔状態の継続と企業秩序違反の結果が要る、と同判決は述べている

  • 三菱樹脂事件(最大判 昭48.12.12)が扱うのは企業が申告を求めた事項についての秘匿・虚偽。最高裁自身が「いちがいにこれを論ずることはできない」としている

  • 後から見つかった経歴詐称は、その懲戒解雇の理由にできない(さいたま地判 平17.9.30。被告は建設業)。ただし同事案では普通解雇としては有効とされた

  • 施工管理の資格詐称だけは労働法の外側に出る。合格の取消と最長3年の受検禁止(建設業法施行令41条)、そして配置した転職先の営業停止30日以上(国交省 監督処分の基準)

  • 裁判所の裁判例検索で「資格詐称」は0件。施工管理技士の資格詐称を扱った労働裁判例は公表範囲に見当たらない

  • 検証すべきは一行ずつの正確さではなく、書面全体から立ち上がる人物像が実物と一致しているか。それは自分では見えないので、他人に読ませて人物像を逆算させる

  • 面接で問われたのは数字そのものよりその数字の理由だった。達成できた理由と未達の理由を対比で準備しておく

  • 資格の証明書は入社手続きで提出を求められ、所属は資格者証に記録される。資格に関する嘘は構造的に突き合わされる

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