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施工管理の直行直帰と残業代|「みなし」が使える条件

公開日 2026-09-03調査番号 R-article-122

「うちは直行直帰だから、みなしなんだよ」

現場に直接入って、終わったらそのまま帰る。事務所に寄らない日の労働時間が、実際に働いた時間とは違う扱いになる。そう説明されることがある。

ただ、この「みなし」という言葉が指しているものは、ひとつではない。名前が似ているだけで、まったく別の制度が2つある。そして片方には、法律が定めた明確な条件がある。

この記事では、その条件が何で、何によって満たされたり満たされなかったりするのかを、条文・行政の通達・裁判所の判断から確認する。結論を先に書くと、決め手は直行直帰かどうかではない。

なお、この記事は法律相談ではない。個別の事案の結論は事実関係で変わる。

まず、「みなし」と呼ばれている2つを分ける

混同されやすいので、最初に分けておく。

名前が似ている別の制度

固定残業代(みなし残業代)

  • 何を決めるもの賃金の払い方
  • 根拠労働契約・就業規則
  • 典型的な言われ方45時間分は手当に含まれている
  • 労働時間の算定(原則)通常どおり実時間で数える
  • 労働時間の算定(通常必要時間・労使協定)通常どおり実時間で数える

事業場外みなし労働時間制

  • 何を決めるもの労働時間の数え方
  • 根拠労働基準法38条の2
  • 典型的な言われ方外に出た日は所定労働時間とみなす
  • 労働時間の算定(原則)事業場内の時間も含めて所定労働時間とみなす
  • 労働時間の算定(通常必要時間・労使協定)事業場内の実時間に、事業場外の通常必要時間(労使協定があれば協定で定めた時間)を加える

求人票や面接で「みなし残業45時間分」と説明されるとき、一定時間分の残業代を手当に含めて払い、それを超えた分は別途支払うという仕組みであれば、それは固定残業代のほうである。労働時間そのものは通常どおり数える。この制度の読み方——何時間分でいくらか、超過分が追加支給されるか——は完全週休2日制の確認手順の記事で、労働条件の確認項目として扱った。

この記事が扱うのは、もう一方である。事業場外で働いた部分について、実労働時間を原則として用いないという、より踏み込んだ制度のほうだ。

算定の仕方は、どちらの規定を使うかで変わる。昭和63年1月1日 基発第1号がこう整理している。

(イ) 原則 労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなされ、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間を含めて、所定労働時間労働したものとみなされるものであること。

(ロ) 当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合 …労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間と事業場外で従事した業務の遂行に必要とされる時間とを加えた時間労働したものとみなされるものであること。

つまり原則(38条の2第1項本文)では、事務所にいた時間も所定労働時間のなかに飲み込まれる。事業場内の実時間を別に足すのは、ただし書の「通常必要とされる時間」を使う場合である。そして同条2項により、労使協定でその時間を定めたときは、協定で定めた時間が「通常必要とされる時間」になる。

(ハ) 労使協定が締結された場合 (ロ)の当該業務の遂行に通常必要とされる時間については、業務の実態が最もよくわかっている労使間で、その実態を踏まえて協議した上で決めることが適当であるので、労使協定で労働時間を定めた場合には、当該時間を、当該業務の遂行に通常必要とされる時間とすることとしたものであること。

中心になる要件は「労働時間を算定し難いとき」

労働基準法38条の2は、こう書かれている。

第三十八条の二 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

条文が要求しているのは、事業場外で働いていることと、労働時間を算定し難いことの2つである。前者だけでは足りない。

そして2項は、この「通常必要とされる時間」を労使協定で定められるとしている。ここで注意したいのが、その協定の届出について定めた労働基準法施行規則24条の2である。

3 法第三十八条の二第三項の規定による届出は、様式第十二号により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。ただし、同条第二項の協定で定める時間が法第三十二条又は第四十条に規定する労働時間以下である場合には、当該協定を届け出ることを要しない。

協定で定めた時間が法定労働時間以下なら、労働基準監督署への届出が要らない。つまり「労基署に届出があるか」を手がかりに確認しようとしても、届いていないケースが制度上あり得る。

1988年の通達が、みなしが使えない場面を3つ挙げている

「算定し難いとき」に当たらない場合を、厚生労働省の通達が具体的に示している。昭和63年1月1日 基発第1号である。

事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。

① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合 ② 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合 ③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合

1988年の通達なので、通信手段が「無線やポケットベル等」と書かれている。現在のスマートフォンやチャットがこの「等」にそのまま含まれると言い切ることはできない——それを述べた行政解釈を確認できていない——が、通達が想定していた構造そのものは読み取れる。随時、指示が届く状態にあるかどうか、である。

そのうえで、施工管理の一日を並べてみる。朝礼で当日の段取りの指示を受け、現場では職長や所長が動きを把握し、元請や上司からは日中も連絡が入り、終わったら日報を出す。3類型の全部に触れうる働き方であることは、条文と通達を並べれば分かる。

ただし念のため書いておくと、これは当てはめの検討であって、行政や裁判所が施工管理について判断したものではない。次の節で見るとおり、施工管理職についてこの制度の適否を判断した公表裁判例は確認できていない。

2024年の最高裁は、2014年判決の考慮要素を参照した

この制度をめぐる最高裁の判断は、2つある。

新しいほうが協同組合グローブ事件(最高裁第三小法廷 令和6年4月16日判決・令和5年(受)第365号)である。外国人技能実習の監理団体で指導員として働いていた人が、時間外労働などの賃金を求めた事案だ。

原審の福岡高裁は「算定し難いときに当たるとはいえない」としてみなしの適用を否定した。最高裁はその判断を破棄し、審理をやり直させるため福岡高裁に差し戻した。

最高裁が着目した事実関係は、判決文にこう書かれている。

被上告人は、本件業務に関し、実習実施者等への訪問の予約を行うなどして自ら具体的なスケジュールを管理していた。また、被上告人は、上告人から携帯電話を貸与されていたが、これを用いるなどして随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることはなかった。

被上告人は、タイムカードを用いた労働時間の管理を受けておらず、自らの判断により直行直帰することもできたが、月末には、就業日ごとの始業時刻、終業時刻及び休憩時間のほか、訪問先、訪問時刻及びおおよその業務内容等を記入した業務日報を上告人に提出し、その確認を受けていた。

そのうえで、次のように述べている。

このような事情の下で、業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等を考慮すれば、…上告人において、被上告人の事業場外における勤務の状況を具体的に把握することが容易であったと直ちにはいい難い。

重要なのは、これが「みなしを認めた」判決ではないことである。最高裁は「算定し難いときに当たる」と判断していない。原審が業務日報の正確性について具体的な検討を尽くさないまま結論を出したことを法令解釈の誤りとし、「当たるといえるか否か等に関し更に審理を尽くさせるため」差し戻したにとどまる。

もうひとつの最高裁判断は、この判決の補足意見が引用している。林道晴裁判官は、阪急トラベルサポート事件(最高裁平成24年(受)第1475号 同26年1月24日第二小法廷判決・裁判集民事246号1頁)を「本件規定についてのリーディング・ケース」と位置づけ、考慮要素がおおむね共通すると述べている。そして、こう続けている。

もっとも、いわゆる事業場外労働については、外勤や出張等の局面のみならず、近時、通信手段の発達等も背景に活用が進んでいるとみられる在宅勤務やテレワークの局面も含め、その在り方が多様化していることがうかがわれ、被用者の勤務の状況を具体的に把握することが困難であると認められるか否かについて定型的に判断することは、一層難しくなってきているように思われる。

つまり林裁判官は補足意見で、個々の事例の具体的な事情に着目して判断する必要があると述べている。多数意見の表現ではないが、この制度の当てはめが業種や形態のラベルでは決まらないことを示している。

建設会社が当事者の判断は2件あるが、いずれも施工管理の事案ではない

裁判所ウェブサイトの裁判例検索で「事業場外」を全文検索すると、労働事件裁判例が22件、最高裁判例が4件出てくる。このうち建設会社が当事者なのは2件で、どちらも職種は営業社員であり、施工管理ではない。

そのうち判断枠組みが読み取れるのが、大東建託事件(福井地裁 平成13年9月10日判決・平成12年(ワ)第55号)である。地方裁判所の判決であることを断ったうえで引く。

この事件では、会社は労使協定を締結していた。それでも裁判所は、次の事実を認定してみなしの適用を否定した。

…その始業時間・終業時間はタイムカードによって管理把握され、かつ、事業場外での労働時間中も携帯電話を通じた事業場との連絡・指示により常時管理されていたのであるから、その事業場外労働は被告の指揮監督下にあったものと認めるのが相当であり、事業場外労働時間の算定が困難であったということはできない。

したがって、上記事業場外労働に関する協定にもかかわらず、原告に関しては、事業場外労働時間の算定はタイムカードにより把握された実労働時間によるべきである。

判決文が認定した勤務実態は、①朝8時頃に出勤してタイムカードを打刻し、朝礼を済ませてから外に出る ②携帯電話を常時所持して上司や同僚の指示を受けながら業務に従事する ③終わった後は必ず会社に立ち寄り、日報を提出して上司に報告してからタイムカードを打刻して帰る——というものだった。1988年の通達が挙げた3類型と、そのまま重なる。

「労使協定を結んでいるから」は、この制度が使える理由にならない。協定は2項の「通常必要とされる時間」を定めるものであって、1項の「算定し難いとき」という前提を作り出すものではない。

みなしが適用されても、消えないものがある

制度の効果を過大に読まないための確認である。同じ昭和63年の通達が明記している。

また、みなし労働時間制に関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されないものであること。

深夜割増も、休日労働の割増も、休憩も、みなしとは別に生きている。求人票や面接で「45時間分は手当に含まれ、超えた分と深夜・休日は別途支払う」と説明されることがあるが、深夜・休日を別扱いにする点はこの通達と矛盾しない。ただし固定残業代そのものが有効かどうかは別の要件で判断されるので、これをもって条件全体が適法だとは言えない。

さらに、労働時間の把握については別系統の義務がある。労働安全衛生法66条の8の3である。

事業者は、…厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

除かれるのは高度プロフェッショナル制度の対象者だけである。みなし労働時間制が適用される人も、この把握義務の対象に含まれる。方法は労働安全衛生規則52条の7の3が「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」と定め、記録の3年間保存も求めている。

この義務が管理職についても外れないことは、名ばかり管理職の記事で労働基準法41条2号の側から扱った。根拠条文は違うが、「記録が無い」という状態を制度が許していない点は共通している。

私は、外に出た日を定時で打刻していた

ここから私自身の話をする。

先に断っておく。私は施工管理の現場を経験していないし、労働条件通知書や雇用契約書で「事業場外みなし労働時間制」という記載を見た経験もない。書けるのは、事業場の外で働く日を会社がどう扱っていたか、それを自分がどう受け取っていたか、だけである。

私が経験した職場のひとつでは、外に出て仕事をする日には出張手当がついた。その代わり、時間は定時で打刻する。早出があっても遅くなっても、所定の始業・終業の時刻を書く。差は出張手当という形で精算される。

これは、この記事が扱ってきた事業場外みなし労働時間制ではない。労使協定の話も出てこないし、制度としてそう説明されたこともない。実際に働いた時間を記録せず、手当で埋めるという運用である。

そして当時の私は、これを不満として受け取っていなかった。完全に自由として受け取っていた。

直行する日は時間的に余裕があることが多かった。朝早く出なければならない日もあったが、それ以上に、朝のルーティンである朝礼も、その日の会議も、社内の細かな人間関係も、外に出てしまえば気にしなくてよかった。普段の人間関係から離れて仕事ができる。そちらのほうが大きかった。

いま条文を読み直して分かるのは、あのとき自分が何かと何かを交換していたということだ。交換に出していたのは、自分が何時間働いたかという記録のほうだった。得ていたのは、外で働く自由である。

そのことに不満はない。交換としては悪くなかったと今でも思う。ただ、実労働時間を記録しない運用と外で働く自由を交換している、という意識は当時なかった。

聞かなくても分かる。渡されるもので分かる

この記事を準備するとき、最初に立てた仮説はこうだった。面接で「勤怠はどうやってつけるんですか」と聞けば、その答え方に会社の性格が出るのではないか。

自分の経験に照らすと、これは外れていた。私はその質問をしていない。する必要がなかったからである。

営業として入る以上、手当の形で残業代が支払われることは大体予想がついていた。それより印象に残っているのは、ノートパソコンを支給されたことのほうだ。そのパソコンで活動ログが取られていることは分かっていた。労働時間が厳しく見られるようになっている以上、パソコンの接続や稼働の記録が勤怠との整合を取るために使われるだろう、という見当はついた。だから、あえて聞かなかった。

ここに、この制度の実務的な急所がある。

「算定し難いとき」に当たるかどうかは、会社が何と説明するかでは決まらない。グローブ事件で最高裁が挙げたのは、業務の性質・内容・遂行の態様と、指示および報告の方法・内容・実態である。記録の有無だけで決まるわけではない。ただし大東建託事件で結論を分けたのはタイムカードと携帯電話と日報の存在であり、記録と指示の仕組みは、その判断の重要な材料になる。

そして仕組みは、入社前でも見えることがある。

これらは、面接の逆質問より前に、内定後の書類や入社初日で分かる。そして分かった時点で、自分が何を交換しているかも分かる。

そしてこれは、在職中だけの問題ではない。辞めたあと離職理由が争点になったとき、こうした記録は事実確認の重要な材料になる。この点は離職票と離職理由の記事で、雇用保険の側から扱った。

まとめ

  • 「みなし」と呼ばれるものには固定残業代(賃金の払い方)と事業場外みなし労働時間制(労働時間の数え方)の2つがあり、別の制度である

  • 事業場外みなしで中心になる要件は労働基準法38条の2の「労働時間を算定し難いとき」。事業場外で業務に従事していることも前提だが、それだけでは足りない

  • 昭和63年1月1日 基発第1号は、①グループ内に労働時間を管理する者がいる ②随時使用者の指示を受けながら働いている ③当日の具体的指示を受けて外に出て、その後戻る——の3類型で適用はないとしている

  • 最高裁は協同組合グローブ事件(令和6年4月16日)で原審を破棄し差し戻した。ただしこれは「みなしを認めた」判決ではない。林裁判官の補足意見は、定型的に判断することは一層難しくなっているとして、個々の事例の具体的事情に着目する必要を述べている

  • 建設会社が当事者の判断は2件あるがいずれも営業社員の事案で、施工管理職についての公表裁判例は確認できていない

  • 労使協定があっても前提は変わらない。大東建託事件(福井地判)は「協定にもかかわらず」として実労働時間によるべきだとした。しかも協定は法定労働時間以下なら労基署への届出が要らない

  • みなしが適用されても、休憩・深夜業・休日の規定は排除されない。労働安全衛生法66条の8の3の労働時間の状況の把握義務も、高度プロフェッショナル制度の対象者以外には及ぶ

決め手は直行直帰かどうかではなく、業務の実態と、指示・報告の仕組みである。そしてその仕組みの一部は、聞かなくても、渡されるもので見えてくる。

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